時短ケア化粧品需要喚起①

2017年から2018年は、時短ケア化粧品と高機能美容液が市場をリードした。
TOPを走り続けているアイテムは、オールインワンゲル。ゲル状の美容液である。
化粧水、美容液、美容オイルが一体となり、1アイテムでスキンケアを終わらすことができるというもの。
ほとんどお手入れに関心がなかった20代、仕事と育児に忙しい30代、人口の多い40代、お肌の手入れで何かが変わると感じていない50代以上をカバーする大きなマーケットである。

 

最初に断っておくが、一般販売している化粧品で本質的なトラブルは解決しない。
言い過ぎと言われそうだが、10年単位の使用ぐらいでは簡単には解決しない。一般販売の化粧品は薬ではない。大きなしわや濃いシミが出来たなら薬品を使用するなどクリニカルな処置をしなければ改善しないと思った方が良い。
化粧品に求めることは、あくまで今朝気が付いたら…ぐらいの短時間で出来立てのトラブルを解決できる…ことができる…程度の期待値である。
ましてや、オールインワンゲルを1つ使ったところでどうなるわけではない。
期待するのは、これ以上トラブルが起きない現状維持と時短である。

オールインワンゲルは、日本人女性が好んで使ってきたが、アジア全土ではそれほど人気があるアイテムではなかった。しかし、SNSなどの影響があり、インバウンドの化粧品購入客がここ一年で増加した。

 

ところで、私が記す消費者ニーズとは、お値打ち商品という意味である。
日本でのコアな購買層の化粧品単品購入価格は、2,000円までが60%以上、2,000円以上は20%未満である。ようするにこの価格帯から上にいくと簡単には売れないということだ。プチプラという言い方が定番化したが、消費者の本音は実用価格ということになる。

 

最近、健やかな状態の肌をキープするということから、消費者ニーズを考え“4月下旬ごろから初夏に使うということで”に気に入ったのは
持田製薬のコラージュDメディパワー保湿ジェル 150ml 3,024円。

私にとって東京の冬は4月上旬までは肌が乾いているので、20代の頃ならいざ知らず、オールインワンゲルだけでは越冬できない。
朝は心地よくても昼には艶がなくなり、脂浮きが激しい酸化したような肌になる。
これが、コートなどが必要のない地域の生活であれば、肌質によっては丁度良いことであろうが…
「3大保湿因子(セラミド・皮脂・NMF(天然保湿因子))のはたらきをもつ成分をバランスよく配合。べとつかず、さらっとした使用感で、乾燥しやすい肌をしっとり保護する。顔も身体もこれ一本でしっかり保湿。」と説明書きがあった。

 

美容に詳しい人は、これらの推奨成分が、特に最新というわけではなく耳からスッと抜けるほど慣れた成分と感じるであろう。しかし、美容の先端と一般消費者意識というのは非常に差がある。成分については、持田製薬はよくよく考えて得意分野のこの商品を販売していると察する。

 

さて、弊社は輸出入及び卸売業である。一昨年の売れ筋商品にある推奨成分は、蜂蜜、竹、かたつむり、墨、ヒアルロン酸であった。
昨年は、椿、EGF、水素、ヨーグルト(?)、ミルク(?)などである。
さらに今年になって成分訴求(その成分が際立って売り込みフレーズになっている)ワードとして「炭酸”(?)」との依頼があった。

 

どれも化粧品専門の科学者や百貨店を中心に販売している商品に慣れた美容ジャーナリストからすると旧くて忘れていたような成分である。
それほど、実際に売れている商品というのは「定番で安心」そして「効果をようやく感じる気がしている」成分である。これが実際にアプローチ力を持っているのである。

化粧品は最新技術を屈指して日々進化している。
だが、多くの消費者には、商品に「仕込んだつもりの開発新成分(美点材)」が気になるキーワードにはなっていない。実際はその化粧品の基礎になっている部分の進化に、知らず知らずのうちに魅かれているということに気づくことが多い。
だから、売れる=最新の成分ではなく、「周知の成分で安心できて目的の結果が得られる」ということは、大変重要なのである。

これは、売れている化粧品をつくる企業にとって実は商品企画の基本中の基本であるが、かつて広告による先導型の販売に勢いがあったころの手法が根強く浸透して意識を変えられない商品開発者を現在でも沢山知っている。

 

この潮流の中で「新成分」「さらに進化」という発想は、化粧品を売る企業として健康に存続する上で冒険なのである。大手企業でなければなおさらである。

ロマンティックすぎると息が続かない。