Z世代の商品購入現場

実に5カ月ぶりの投稿である。
卸売り稼業に専念していたところに、久しぶりに海外ブランドのアジア向け商品開発の話があり、ブランディング作業に没頭していたため、市場動向の発表が疎かになった。

さて、今回は珍しく自社で扱っているある商品の売れ行きの話である。
そのため、日本の全国的な話ではなく世の中の全てではないが、一つの傾向として紹介することも一案と考え書き残しておく。

弊社が卸売りしている商品の中に非常に売れ行きの良い口紅がある。
この口紅の人気は、「人気の成分が入っている」とか「色合いが独特」というわけでは決してない。ユーザーの希望を普通に叶えてくれるアイテムという認識でいる。

実際にアンケートを取ったことはないが、Z世代に人気の雑誌の掲載された際、“発色がよく、色のキープ力が高い”ことから編集部のオススメ№1として紹介されたが、その栄光以前から非常に売れていた。

私としては「天然由来成分で作り上げた色とスキンケア効果のあるベース」が店舗への売り込みと自信となっていたが、Z世代ユーザーやメディアはそのようなことを知らないので、独自のアンテナで評価して購入しているのである。
さらに、ユーザーが一番評価しているのは口紅容器のヴィジュアルであり、どうしても購入したくなるらしい。(としか店頭現場の人と私は考えられない。)

容器デザインは、各々の10色で異なるデザインが施してある。
Z世代が心惹かれるカラーの地色にしている。
これらのことは、想定内の分析で発売に至っていることから、それほど重要なことではない。

この商品を発売して1年以上になるが、私は、1度も店頭に入って売れ行き動向を確認したことはなかった。
いつ行っても人気店というのは非常に混んでいて、何と言っても、購入者ではない人間は、お邪魔以外の何者でもない。店にとっても来店客にとってもそれは同様である。

8月の最終金曜日の昼間、ふと思いたち、店頭を覗いた。
この商品がどのように売れて行っているのを確かめたい衝動に駆られて店に入った。

他社製品と並べられた商品を見て、すぐに感じたことは、「売れているから陳列の場所が良い。」である。
そして、ここで「うちの商品は、他社の口紅より約300円ほど高い。」ということを知った。
ここでもし売れていなかったら、高いことを原因の一つとするが、「高い。」いや「売り場の中で一番高い。」のに何故?と観察していたところ分かったことだが、それは、自分のお財布事情だけで商品の購入が決定していないことだ。

女性向け市場を長年見続けていると、分析はほぼ的確に出来る。
最近は、多様化しているとは言え、多様化を網のように軸にして細く決定できる。ある意味、非常に分かりやすい時代だ。
分析にお金をかけて詳細にし、その網の上に自分が立つことができれば以前よりよく分かる時代になった。

しかし、エンドユーザー動向というのは、地方性や購入者の国籍などと売り場の立地状況で大きく変わる。
だから、見る必要がない。というか、なかなか把握しきれない。

今回、分かったのは、Z世代は、子供ときから幾つかのお財布ポケットがあると言われてきたが、アルバイトや初任給などで自分の自由なお金が出来ても、これまでの幾つかのポケットから何時でもお財布を出せるということ。

ちょっと普段購入するより300円高い。いえ、そのせいで非常に高く感じる物を買うときには、遠慮なく別のポケットからお財布を出して「これが、どうしても欲しい。買いたい。」と言って入手するのであった。
それも、新なポケットである兄や彼氏という数が増えていたことを確認できた。

口紅を異性に購入してもらう時代の到来である。